糖尿病腎症は初期なら寛解することもあるが…
糖尿病合併症のひとつ「糖尿病腎症」は初期はまったく自覚症状はありません。もし糖尿病腎症を治療しないで病院に行かずに放置するとどうなるのでしょうか。
タレントのグレート義太夫さんは糖尿病と診断されて通院していましたが、9か月ぐらい通院をさぼった時期があり、その後人工透析を始めましょうということになったそうです。
当時、義太夫さんは血糖値も良好で糖尿病が良くなったと思っていたんだそうです。じつは腎不全になるとインスリンが分解されにくくなるので血糖値が下がり、糖尿病が良くなったと勘違いしてしまったんですって。
下の図は人工透析の仕組みを解説したフリー素材のイラストです。腎臓が行えなくなったことを代わりに定期的に機械にやってもらうのです。
詳しいことは良く分からないのですが、通院をさぼってしまう前に病院では医師から腎機能の低下を指摘されなかったんでしょうかね？だとしたら、義太夫さんが気の毒です…
さて、糖尿病腎症は「初期段階でしっかり糖尿病の治療、血糖の管理を行えば治ることもある」そうです。治るというのはおそらく「完治」ではなく「寛解」なのでしょう。
そして「治ることもある」ということは逆に言えば「治らないこともある」わけです。このあたりは糖尿病腎症になりやすい体質かどうかも関係してくるのかもしれません。
ただ放置するだけでは寛解するわけがない！！
糖尿病腎症の初期なら寛解することもあると書きましたが、これはつまり「一生懸命治療に取り組んだ患者の一部だけが寛解し得る」ということです。
病院へも行かずに放置して糖尿病腎症が寛解するor進行が完全に止まるとしたら、それは今までとても太っていた方が心を入れ替えてダイエットするとか、食生活をがらりと変えるとか、何かしらの努力をしてそれが功を奏した場合だけでしょうね。
特別不摂生をしていたわけでもないのに糖尿病になって糖尿病腎症になった方が、それまでの生活と何も変えずに病院へも行かず放置していてよくなることはまずないでしょう。
世間一般でいう「怠惰な生活」ではなくても、その方の体質によっては糖尿病腎症を発症・進行させるのに十分であるということもあります。
糖尿病を発症してから糖尿病腎症になるまでには5～10年ぐらいかかるとされています。そして個人差はありますが、血糖コントロールが良くない時期が15年ぐらい続くと糖尿病腎症３期に至るそうです。
グレート義太夫さんは糖尿病と診断されてから約11年半で人工透析を始められましたが、診断されるかなり前からすでに糖尿病だったのかもしれませんね。
私は5年半前に糖尿病と診断されましたが、その時点で妊娠糖尿病から10年以上経過していました。もう16年ぐらい経ちます。気を付けなければ…！！
糖尿病腎症３期Aから薬なしで回復した方もいます
糖尿病腎症３期A(持続性タンパク尿、尿検査でタンパク尿が出る）の段階から糖質制限食だけで薬なしで改善した方は今までに何人か聞いたことがあります。
アメリカの1型糖尿病の医師バーンスタイン先生は著書によると30代ですでに「尿検査でかなりのタンパク質が検出された」そうですから糖尿病腎症3期だったのでしょう。
バーンスタイン先生は自己血糖測定と糖質制限を開始され、1年後にタンパク尿が（－）になり、かなり長期間かかって（おそらく数十年後？）微量アルブミン尿も完全に（－）になったそうです。
この方たちは糖尿病腎症を放置していたのではなく、きちんと通院して検査を受けて経過を見ながら実践された結果です。もちろん全員が寛解できるわけではありませんが(私も…）「進行が止まった」という方はかなりたくさんいらっしゃいます。
↑私の糖尿病ブログの記事「糖尿病が治ったと勘違い！？糖尿病腎症の悪化に注意！」より
普通、それまでの生活を劇的に変えない限り、糖尿病腎症を放置していると血糖値が良好になったり（腎機能が低下してインスリンが分解されにくくなるため）血圧が高くなってきたりします。
そして、むくみ・体がだるい・皮膚のかゆみ・手足の痛み・貧血などの症状が出るようになり、最終的には腎臓の機能がほとんどなくなってしまって人工透析を受けなければいけなくなります。
現在、日本では新たに人工透析を始める方の中でもっとも多い理由が「糖尿病腎症」です。人工透析になると生活の制限も多いですし長時間拘束されますし本当に大変ですから、できれば回避したいですよね。
最近では、糖尿病腎症がまだ初期の段階で薬を飲むと腎症の進行を抑えることができることも分かってきました。誰にでも確実に効く…というわけではなさそうですが。とにかく、何もしないで放置は絶対にやめましょうね！
