タンパク質は糖尿病腎症に良くないの?
糖尿病腎症のあるみなさんは「タンパク質は腎臓に良くないのではないか…」と気になっていらっしゃるのではないでしょうか?
そのため糖尿病患者さんでも「タンパク質の食べ過ぎは腎臓に良くないから控えている、筋トレをしているけど痩せすぎでなかなか筋肉がつかない」と嘆いている方も…それはそうでしょうね💦
タンパク質が十分に摂取できていない状態でいくら運動しても、筋肉をどんどん増やしていくことはほぼ無理ですから…
実際のところ、タンパク質は糖尿病腎症に良くないのでしょうか?具体的にどれぐらいの量を摂るべきなのでしょうか。
はっきりとした「答え」が出ているとは言い切れず、医師たちの間でもいろいろな考えがあるのが現状ですが…私の考えも交えてまとめてみることにします。
なお、糖尿病腎症の状態によって食事制限は変わってきますので、何か変える時には必ずあなたの主治医とよく相談なさってからにすることをお勧めいたします。
なぜ糖尿病腎症ではタンパク質摂取制限が必要なの?
上の表は糖尿病情報センター様のサイトから引用させていただきました。たとえば体重60kgの方で糖尿病腎症第2期であれば1日に摂取すべきタンパク質の量は60~72g、第3期なら48~60gということになります。
タンパク質からできる老廃物を腎臓が処理するわけですが、糖尿病腎症やその他の原因による腎症では腎臓の正常な糸球体(老廃物をろ過する毛細血管の塊)の数が減っているので、大量にタンパク質を摂取すると処理しきれないのでタンパク質を制限しようというわけです。
ただ腎臓もタンパク質からできているので、タンパク質を制限しすぎると良くないのではないかというのもその通りかなと思います。
特に糖質制限を行っている場合、タンパク質が分解されたアミノ酸の一部は肝臓で「糖新生(糖以外の材料から必要なブドウ糖を作り出す)」に使われますので、タンパク質は多めに摂取しなければいけません。
そもそも、糖尿病患者が糖尿病腎症になる原因は何でしょうか。健康な方(糖尿病ではない方)との違いは何なのか考えてみましょう。
糖尿病患者は健康な方と比べて血糖値が高く、かつ2型糖尿病患者では多少なりとも「インスリン抵抗性」があり、健康な方よりも大量のインスリンが分泌されていることが多いものです。
血糖値が高いこともインスリンが大量に体内を循環していることも、どちらも糖尿病患者の腎臓を悪くする原因になります。インスリン抵抗性がある状態でのインスリン大量分泌はなるべく避けたいですね💦
少なくとも、糖尿病患者さんは健康な方よりもタンパク質をたくさん食べていたせいで糖尿病腎症になったわけではないでしょうね。タンパク質が悪いのならボディビルダーやアスリートは真っ先に腎症になっちゃいます。
タンパク質制限をすると糖尿病腎症の進行を止められるのか
残念ながら、糖尿病腎症患者がタンパク質制限などの食事制限をきちんと守ったとしてもその効果はわずかなもので、「糖尿病腎症のステージを押し戻せるほど顕著な効果はない」そうです。
そのためアメリカ糖尿病学会ガイドラインでは2014年から「2期以上の糖尿病腎症患者に対するタンパク質制限食を推奨しない」と変更しています。
糖質制限の第一人者の江部康二医師は「糖尿病腎症第3期でもeGFR60ml/分以上なら糖質制限食OKでタンパク質制限は不要」とおっしゃっています。私はeGFRはいつも120ml/分前後です。
また腎臓専門医の塚本雅俊医師は「糖尿病性腎症でも糖質制限は問題ない」として患者さんたちに糖質制限を指導していらっしゃるそうです。
塚本医師は「腎臓病から起こるる心疾患の予防にはタンパク質制限より、糖質制限と塩分制限の優先順位が高い」とおっしゃっています。なるほど…
結局は「この方法でやれば絶対に100%大丈夫だ」という食事療法は存在しないのかもしれません。各自、定期的に血液検査をしながら主治医とよく相談して慎重にやっていくしかないんですね。
糖尿病腎症になった原因は何かを考えずに「タンパク質は危険だ、危険だ」ばかり言って糖質の摂りすぎについてはあまり気にしない方がちらほらいらっしゃるのが個人的には心配です💦
糖尿病腎症も他の糖尿病合併症と同様に初期段階なら進行を止められる可能性がありますが、ある程度以上悪化してしまうと難しくなるのでなるべく早いうちに手を打たなければね。